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第11回 患者友の会勉強会のお知らせ

第11回 患者友の会勉強会 ~脳卒中後のボツリヌス療法~ 

            講師 : 有村公良 院長

 

大勝病院の患者さま・ご家族を対象にした医療講座、第11回「患者友の会勉強会~神経内科の病気のお話~」が7月14日に開かれました。講師は有村公良院長。演題は「脳卒中後遺症による痙縮に対するボツリヌス療法」
 有村院長の話は次のように始まりました。
 
 「ボツリヌス療法は、NHKが言うほどすごいことではありませんが(6月6日「ためしてガッテン」で取り上げられました)、脳卒中後遺症の治療法としては、画期的な療法に違いありません。私もこの病院で、これまでに70人余りの患者さんにこの療法を行ってきましたが、ほとんどの患者さんが何かしらよくなっている。機能が回復しているのです。発病から10年経った方でも、それまで動かなかった機能が動くようになっている。これは本当にすごいことなんです。これまで脳卒中で麻痺状態になると、6ヵ月を過ぎるとよくならない、とされてきました。6ヵ月以後は維持期といって、症状を維持するのがせいいっぱい、と考えられていたのです。それが、維持期の人でも改善の可能性が出てきた。NHKに登場した先生は私もよく知っている方ですが、この前に会った時も『維持期という考え方は、もう無くさないといけませんね』と話したものでした」
脳卒中は介護が必要になる第1位の病気。急性期治療の進歩によって死亡率は減少したが、後遺症によって介護するケースが増えてきた。脳卒中の後遺症としてよく見られる運動障害が「片麻痺」と「痙縮」。障害を受けた脳の反対の側の手足に麻痺が起こる。右の脳が障害すれば、左の手足が麻痺する。歩きにくくなったり、字が書けなくなったり。3ヵ月ほどすると指や肘がしだいに曲がってくる。これが痙縮あるいは痙性。筋肉が緊張しすぎて手足が突っ張ったり、こわばったりしてくるのである。
最近は、リハの効果が期待できない維持期になっても、適切なリハを行うことによって、運動回路が再生(脳の可塑性)することが分かって、促通反復療法(川平法)という素晴らしいリハ法も開発された。当院のリハでも、新しく促通反復療法(川平法)を導入しております。リハは脳卒中で壊れた運動回路を作り直すことで、麻痺を改善させるのですが、痙性があるとリハを行いにくいのです。
ボツリヌス療法は、この突っ張ったりこわばったりしている筋肉に、ボツリヌス菌が作り出す天然のタンパク質、ボツリヌストキシンを有効成分とする薬を注射する治療法である。薬(ボトックス)を注射してやわらげる治療法。選択した筋肉を狙って注射する。麻痺を良くするのではなく痙性・痙縮を改善する療法である。
筋肉の突っ張りやこわばりを柔らかにする治療法はこれまでもあった。内服薬の使用、神経ブロック療法、外科的治療、バクロフェン髄注療法である。それぞれ、神経の部分的切断があったりと様々な難点がある。これに対し、ボツリヌス療法は、痙縮が認められる筋肉に直接注射するので、局所性の痙縮の治療に有効。筋肉の突っ張り、痙縮による痛みを改善し、容姿の変化、たとえば関節が固まって動きにくくなったり、変形したりするのを改善する。また、着衣や脱衣、移乗動作、食事などの介助・介護がしやすくなり、手指機能、移動能力などの改善に向けてのリハビリテーションもしやすくなる。
 注射による効果は3、4ヵ月。痙縮が戻ってくるが、必要に応じて反復投与が可能で、リハビリテーション併せ、他の部位へも治療範囲を広げることができる。副作用が見られることもある。注射部位が腫れる、痛みを感じる、赤くなる、体がだるい、力が入らない、など。しかし、ほとんどの症状は軽微、時間が経つと治る。吐き気がする、呼吸が苦しい、痙攣が起こる、と訴えることもあるとされるが、私は治験の時代から携り、大勝病院でも70例余りの治療に当たってきたが、これら副作用の経験は無い。私はとても安全な薬と考えている。

  以上述べてきたことで、脳卒中後のボツリヌス療法の利点をまとめると、
①痙縮に伴う痛み、容姿の変化、介護時の問題点、動作時の問題点を改善する
②他の治療法に比べ、副作用が少なく、出ても一過性である
③日常生活で最も気になっていることを、選択的に改善できる―ことをあげることができる。

 完全に麻痺が治ると過大な期待をかけてはいけないが、ボツリヌス療法と川平法を組み合わせた治療、つまり、ボツリヌス療法で痙性をまず抑え、集中的なリハを行うことによって麻痺を改善する。日常生活で最も重要な手足の機能を改善させる最良の療法ではないかと有村院長は締め括りました。

 

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