第6回 「脊髄の免疫疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HAM)について」
講師 : 松﨑敏男医師
大勝病院の患者さま・ご家族を対象にした医療講座、第6回「患者友の会勉強会~神経内科の病気のお話~」平成23年12月10日(土)開かれ、神経内科部長の松﨑敏男医師が「脊髄の免疫疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HAM)について」話しました。南九州地方にも原因ウイルスのキャリア(感染者)が多い病気とあって、熱心に聴き入る姿が見られました。
HTLV-1とは、ヒトT細胞性白血病ウイルス1型のことで、成人T細胞白血病(ATL)をひき起こす原因ウイルスであることが知られています。しかし、このウイルス、実は白血病のほかに、脊髄症を発症させることも分かっており、これを発見したのが鹿児島大学医学部第3内科(神経内科)の医師たちでした。1986(昭和61)年のことです。発足後歴史の浅い第3内科の画期的な成果でした。
この脊髄症がヒトT細胞性白血病ウイルス1型関連脊髄症(HAM)。HはHTLV-1、Aはassociated(関連)、MはMyelopathy(脊髄症)。第3内科の命名です。松﨑医師は第3内科時代から、そして当院に移ってからもHAMの治療・研究に携わり、当院の職員研修会でもたびたびHTLV-1に関して講義されている。今回の講座では「脊髄の病気には様々なものがあるが、HAMは、脊髄に炎症が起こり、排尿・排便障害を伴う脊髄性麻痺を呈する。進行性で肺疾患、関節症、筋障害、シェーグレン症候群(眼、口腔、皮膚などが乾く)などの種々の合併症を発症する」「HTLV-1抗体陽性と言われた方(HTLV-1キャリア)が、靴の外側がすれる、つまずきやすい、足が突っ張る、膀胱炎を繰り返す、などの症状が出たら要注意」と、この病気の特徴を紹介。難治性の病気ではあるが、近年研究が進み治療指針もできており、「発症したらできるだけ早いうちに治療を開始して進行を遅らすことが大切」と、留意点を指摘されました
このほか、HTLV-1感染者、いわゆるキャリアについても解説。キャリアの約95%は生涯発症しない、ATLの発症率が5%、HAM%、目の病気であるHTLV-1関連ブドウ膜炎(HU)0.1%、また、ほとんどが母から子への母子感染(母乳、産道感染)であること、男性から女性への性感染もあることなどを説明、HAM患者会(アトムの会)、NPO法人「日本からHTLVをなくす会(スマイルリボン)」が結成されていることなどにも触れ、話は多岐にわたりました。